副詞の副とは何か?【adverbに秘められた副詞の本当の役割】伊敷台英語教室

Kids running on sandy beach 基礎英語

「ふくし」と聞いて、皆さんはどのような事柄が真っ先に頭に浮かびますか?

復氏(ふくし):もとの氏にもどること(復姓)】が真っ先に浮かんだという方は恐らく法曹界の方ではないでしょうか。または、【副使(ふくし):正使を補助し、必要な時にはその役を代行する役目の使者】が真っ先に浮かんだという方は、一体どのような方なのでしょうか?

副詞(ふくし)という言葉の存在を知ったのは、米国留学から帰国して間もない頃でありました。5月の風が吹き抜ける爽やかな昼下り、窓辺でテキスト原稿の手直しをしていると「そう言えば、adverbって日本語では何て言うのかしら?」と、少し心ときめかせ、辞書でadverbを調べてみたのが「副詞」との初めての出会いでありました。「副詞」という名称の第一印象は「この名称から伝わってくるものは何もないわ」といった実に素っ気ないもので「何故にadverbともあろうものが副詞なんて退屈な品詞名と成り果ててしまったかしら?」と不憫に感じたことを今でも覚えています。

品詞という言葉が出たついでに、「品詞とは何ですか?」と生徒さんから問われたら、「という詞(ことば)からもわかるように、それは言葉お品書きです」と応じております。そして「例えば、定食屋のお品書きが、麺類、丼物、お飲み物と種類別に分類されているように、言葉というのは種類別に計8品に分類出来ると言われています」と続け、「その8品は、名詞(pen)・代名詞(He)・形容詞(old)・副詞(slowly)・動詞(speak)・前置詞(to)・接続詞(and)・間投詞(Oh!)であると言われていますが、無限に広がりをみせる言葉なるものが、たったの8品に収まり切るものなのでしょうか?」と問い返します。問い返された生徒さんの反応は様々ですが、個人的には「たった8品に収めるのは無理がある」と感じ、「あえて品詞分類しない方が良い言葉もあるのではないか?」と考えております。

例えば、very(とても)という英単語がありますが、このveryは品詞分類上、どの参考書、どの辞書を見ても判で押したかのように「副詞」と記載されております。しかしながら、副詞の英名であるadverbという英語目線でvery(とても)という単語を見つめる者にとっては「very(とても)をadverbに分類することはあってはならないことである」と言わざるを得ません。

一般的に「副詞の副とは何か?」という問いに対しては「それは、副(そ)える(添える)という意味です」と、これも判で押したかのように回答し、「副詞は自立語で単語に副えることで連用修飾語として機能します」と続きます。これで「なるほど!目から鱗が落ちた。」という方はさて置き、意地悪な見方をすると「多少不都合な、出来ればそっとしておきたい、でも告げねばならぬ重要なことを1つ隠してはいませんか?」と疑ってしまうことがあります。それは、副詞の副って「例えば、副作用」「例えば、副業」「例えば、副社長」、つまり「2番手」もっと意地悪く言うと「1番手になれない2番手」という意味も含有していませんか?というものです。つまり、主要な8品詞(1番手)になれず、「どこに分類したらいいの?」と困り果ててしまった単語を、副詞つまり2番手の詞と名付けることで意図的にその袋口を大きく広げた副詞袋の中に全部放り込んでいるのではないか?という疑いです。あらゆる2番手の単語を、これ幸いとばかりに副詞袋へ放り込んだ結果、「副詞はこんな働きもあって、あんな働きもする、ここもあそこも修飾できて、副詞くんの就職先ならいくらでもあるんだかんな」といったように副詞の働きが、まるで多岐にわたるかのように解説されているのは「これが原因か?」と疑いの色を更に濃くしております。行き先なく、副詞という大袋に投げ込まれた2番手単語代表very(とても)を筆頭に、probably(恐らく)受け入れ先が副詞only(だけ)だったのか、投げ込まれた単語がtoo(あまりにも)多く、副詞の様相はreally(本当に)複雑で、quite(全く)収集がつかない副詞袋の乱雑な中身がこの有様であります。

さて、やや怪しげで不透明感が漂う副詞という名称に比べ、英名adverbは実に透明感に満ちあふれ、清流のごとき玲瓏で、名は体を表すとは正にadverbのためにあるような言葉であり、その役割に加え、どこに位置すべきか、その語順までもをその名称によって巧妙に暗示していることに気付いている方はそう多くはないはずです。

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